「―――言葉のやる気は熱量になる」
                     ――――「矛盾都市TOKYO」『君』の記動力






    新人のお相手は事務員







 溜息を吐く、それだけで目の前の四人の少年少女はやる気を燃やしている。
 それに反比例するように、私のやる気がごっそりと減っていく。

「準備はいいかな、櫃戯君」

 よく通る声で話しかけてきたのは『エースオブエース』の二つ名を持つ高町なのは一等空尉。
 何故こんなことになったのだろうか、そう思って少し回想することにしよう。


―――30分前

「すみません、高町一等空尉はおられますか?」

 そういって新人の訓練施設にきた私は、高町一等空尉の直筆サインが必要な書類を手に持っていた。
 内容は訓練施設の調整と消耗部分のパーツ交換に関する明細であり、総務と高町一等空尉と部隊長の直筆サインが必要なのだ。
 普通なら総務だけかもしれないが、ここ六課では隊長陣がしっかりと書類に目を通して自ら確認することが多い。

「どうしたのー?」

 新人の訓練を一時的に中断したらしい高町一等空尉が声を掛けてきた、オレンジ色の髪をツインテールにした少女、おそらく新人の一人だろう。
 その少女が訝しげな眼を私に向けている・・・・なんで訓練の邪魔をするのか、そう眼で問いかけるように。

「本日提出分の訓練施設関係の書類です、できれば直接持ってきて欲しいとの事でしたので、お持ちしました」

「ありがとう、櫃戯君」

 にっこり笑って書類を受け取る高町一頭空尉、何故はわからないがその笑顔が眩しく感じてしまうのはいつものこと。
 新人の方も多少視線が柔らかくなったようなので一安心しておく、経験上このあとで油断するとヒドイめに会う事が多い。
 と、ヴィータ副隊長がショートカットの青髪鉢巻な少女を引き摺って現れた、ぐったりしているが大丈夫だろうか?

「櫃戯じゃねえか。何しにきたんだよ、訓練場に一番縁が無いやつがよー」

「高町一等空尉に渡す書類を持ってきたんです、いまサインされてますし」

 ヴィータ副隊長は接し方を間違えるとデバイスで殴りかかる、以前子ども扱いした新人が模擬戦をして二ヶ月うなされ続けたらしいし。
 更にその向う、林側から金髪が揺れているのが見えてくる、隣に桃色の髪をポニーテールにした人も一緒のようだ。
 フェイト・T・ハラオウン執務官とシグナム副隊長だろう、その後ろの背の小さい少年少女は新人だろうか?

「あ、櫃戯」

「む? 久しいな、架雅烙」

「お久しぶりですハラオウン執務官、シグナム副隊長」

 挨拶しながら思うのは自分の名前。何でこうもポンポンと名前か苗字で読んでくる?
 プライベートならいざ知らず、今は一応勤務中のはずなんだが・・・・・?

「おめえ、また変なことで悩んでるのか。いいじゃねえか呼び方ぐらい、気にすんな」

「・・・・・・そう思っておきます、ご助言ありがとうございました」

 ヴィータ副隊長にあっさりと流されてしまった、本当にいいのか?

「櫃戯君」

「終わりましたか、高町一等空尉」

「うん。だから、模擬戦しよっか♪」

「はい?」

「ティアナとスバル。キャロとエリオ君も混ざる? 管理局の中でも、櫃戯君に攻撃を当てることができる人は少ないよ?」

 そう、確かこのときに高町一等空尉がいきなり模擬戦の話をし始めたんだっけ。

「そんなに強いんですか? なのはさん」

「私となのは、はやてが組んでも一撃入れるまで相当な時間が掛かるよ。参加してみない、エリオ、キャロ」

 高町一等空尉の言葉にあっさり賛同するハラオウン執務官、その言葉に頷くシグナム副隊長とヴィータ副隊長。

「やります」

 静かな声で恐ろしいほどのやる気をかもし出しているのはオレンジ色の髪をした新人の少女、その後ろでは青髪の少女がシャドーをしている。
 そして続くようにして赤毛の少年―エリオと呼ばれていた―とぼうしを被り小さな龍を従えた少女―キャロと呼ばれていた―も参加を表明した。
 こうして、私は新人四人相手の模擬戦へと突入しかけているのだった・・・・・何故書類を届けに来てこんなことを?

―――回想終了

「そうそう、さっきシャーリーとはやてちゃんに連絡入れたから、許可は出てるからね?」

 小首を傾げながらにっこり笑って言う言葉では有りません高町一等空尉。

「ついでに模擬戦を見に来るって言ってたよ、はやて」

 部隊長、あんたまた書類貯めるつもりか?!

「ふむ、参考までに教えよう。私たちヴォルケンリッター四人でこいつに一撃入れるのに掛かった時間は、一時間と二分だ」

 シグナム副隊長が余計なことをいい、オレンジ髪の少女が驚いている横で・・・・・目を輝かせてやる気を噴火させている青髪の少女がいた。

「因みに、はやてたちがやった時は五十分かかったぞ」

 ヴィータ副隊長、更に油を増やさないでください、赤髪の少年がすっごい勢いでやる気を出してます。

「せやけど、模擬戦前に自己紹介ぐらいしときーよー」

「のんきな声で仕事サボってなにしやがってくれていやがっておられますか部隊長」

「ん、見物や♪」

 実に簡素で簡潔な説明をありがとうございます、涙が溢れそうですよ部隊長。

「そういえばティアナたちはまだ会ったこと無かったんだっけ」

 高町一等空尉、其処を忘れてさらりと私を新人の相手に放り出しますか。

 新人の方を見るとオレンジ髪の少女が一歩前に出る、どうやらこの少女から順に行くらしい。

「ティアナ・ランスター、階級は二等陸士です」

 実に簡素。そして思った、私のほうが階級上ですか。

「あたしはスバル、スバル・ナカジマ。階級は二等陸士だよ!」

 既にやる気十分、寧ろさっさと始めろといわんばかりにやる気を噴火させている青髪鉢巻少女。
 ところで、あのローラーブーツってデバイスコアついてるけど、右手のガントレットとセットか?

「僕はエリオ・モンディアルです。模擬戦、よろしくお願いします」

 この少年がハラオウン執務官が引き取った子どもの片割れ?
 礼儀正しさが第一印象に入るということは、意外と背伸びしたいお年頃というやつか?

「キャロ・ル・ルシエといいます。こっちの龍はフリードです、よろしくお願いしますね」

「きゅくー」

 同じように礼儀正しさが目立つ少女、引き取られたもう一人の子どもか。
 というか、もしかしてあの白い龍は参加できるだけの力があるのか?
 でかくならないことを祈ろう、巨体に成られるとリーチが長くなってやりづらくなるし。

「私の名前は架雅烙・櫃戯、階級は三等陸尉。本職は事務職ですので、今後会うこともあるでしょうからお見知りおきを」

 言うべきことをさっさと言う、自己紹介は簡潔にが私のモットー。
 私の階級を聞いて唖然とするランスター、モンディアル、ルシエの三人。目を丸くして「おー」とか漏らしているのはナカジマ、砕けすぎだ特にナカジマ。

「こんで自己紹介は終わりやな? シャーリー、設定は市街地にしたってやー」

「はいはいー」

 目の前で廃墟に近い市街地が形成されていく、『足場』が多くて助かりますよ部隊長。

「勝敗条件なんだけど、基本的にこっちで五回攻撃が当たったら撃墜判定だすから、その判定を受けた人は脱落だよ」

「おまえら、こいつ相手に手加減なんていらないから思いっきり攻撃して、いまのお前らの実力を確かめて来い。
ついでに言えば、一撃当たればこいつの意識は簡単に落ちる。頑張れよー」
 高町一等空尉の言葉で逃げれば何とかなると思ったのも束の間、ヴィータ副隊長が鬼発言をしてしまった。
 目を爛々と輝かせた新人四名・・・・絶対に逃げ切ってみせる、意地でも食らってたまるものか。(泣)

「ほんじゃ、開始やー♪」

 どこから取り出したのかわからないが部隊長が笛を一つ吹き、模擬戦の幕が上がった。



 追伸

「どうせリインは目立ちません、リインだってちゃんとはやてちゃんのお側にいるです」

 通称管理局の『ちびっこ曹長』が部隊長の肩で涙ながらにイジケていた。







アトガキもどきっぽい何かしら

どうも、第二段完成しましたー
なぜか普通に前後編のような形になってしまいましたが、気にせずにー
新人とは始めて会いますが、はやてに振り回されて連れ回されているので隊長陣とはそこそこ仲がいいです
へっぽこ料理人な緑は勝手にはやてと櫃戯がいい仲に成るように画策しては失敗しています
その辺を後々書くことができればと思いますねwww
次回、シリーズ3は模擬戦の後編です
どんな戦いになるのか、お楽しみにー(でも何時できるか不明です)
地味にボロが多いです・・・・矛盾点などの指摘は大歓迎ですよー?

2008.05.29-06:36完成
2008.05.29-07:18誤字修正及び加筆(少々)


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