「思い信じて打撃すれば、エネルギー保存の法則に従い、いかなるものも打撃力を受ける」
                                    ―――『矛盾都市TOKYO』主人公の記動力







        【八神はやては多忙である】












 目の前にいるのは機動六課部隊長の肩書きを持ち、ぷちたぬきとも呼ばれている八神はやてその人。
 声を掛けるべきか迷うが、掛けないと駄目だろうから観察をやめることにする。

「八神部隊長、少々急ぎの報告があってまいりました、訓練所の件で」

「うー、あー、うー。手伝ったってやー、架雅烙三尉ー」

 部屋の中をぐるりと見渡す。目に入るのはこざっぱりした部屋とロッカー、少し大きめのデスク程度。
 ではなにをもって手伝えというのか、それは勿論八神部隊長の目の前に開かれているウィンドウが原因である。
 電子書類のサイン処理と分別、それが現在行われている作業に値するものだ。

「私程度の階級では見てはいけない書類の方が多いと聞いていますので、頑張ってください」

「おにー」

 返答に力が無い、というか覇気もない、そしてなによりも、殆ど突っ伏した状態で手が止まっている。

「今日提出分が終わらないと変えれないといっていたのは誰ですか、リイン曹長にも確認取りましたし」

「そないなこと言わんといてやー、殺生やー」

 殆ど泣きが入っている状態でデスクの上に転がった顔が上がり、ウィンドウを見ながら作業が再開された。
 データの方にアクセスし、どのぐらい進んだのかと数えてみるが、全体数のおおよそ四割強といったところのようだ。

「このペースで行くと、日付が変わるどころか朝日が拝めますよ部隊長」

 その台詞がトドメになったのか、突っ伏した状態に逆戻りして横を向き泣き始めてしまった。
 しかし事実を言っただけなのに・・・・訓練所でのことを報告したらどうなるか怖いもの見たさの恐怖が大きくなる。

「ところで訓練所でのことですが?」

「んー? うちを助けへん部下の発言を許したるから報告せー」

 未だに泣き言のように言ってくる部隊長を見つつ、溜息を飲み込んで報告を始める。
「えー、ティアナ・ランスターが精神的に少々暴走したようで、高町一等空尉がぷちっといったらしく魔力ダメージが大きいそうです」

「なのはちゃんやりすぎやー」

「因みに副隊長らは高町一等空尉の方にいったので、新人というかランスターの傍には残りの新人三人が付き添ってます。後シャマルさん」

「うーあー、それ最悪やん」

 見た目でもわかるほど更に沈み込む部隊長、精神年齢が幼いのかこういった面を最近良く見せるようになった。
 ただし、話を聞く限りでは私の前だけとの事だが、その辺りが良くわからない。

「それとフィニーノが高町一等空尉の過去映像をピックアップして編集してました・・・・たぶん新人に見せるつもりでしょうね」

「あ゛ー・・・・・・」

 漫画だったら絶対に縦線を大量に背負うほど沈み込んだ部隊長、哀愁を漂わせるでは言葉として弱いかもしれない。

「仕方ないですね・・・・補助して差し上げますからさっさと終わらせましょう」

 その台詞で一気に期限が上昇し笑顔になる、嘘泣きではなかったはずなんだが?

「ほんまやね? ほんまなんやね? ほんまやなー!!」

 冗談ですまないほどテンションが上昇してしまったらしい、傍迷惑な。

「はいはい、補助しますから頑張ってください。ついでに上から言われている伝言も伝えますから。
『今日中の分を出さなかったら減俸20%3ヶ月』との事です、総務課でしたっけかね?」

「んなーっ?! もっと早く言わんかい、さっさと終わらすでー!!」

「ついでに言いますけど、私が手伝ったのは内緒ですよ? 階級的に見るとやばい書類の方が多いんですから」

 わかっているのか、わかっていないのか、返事もせずに書類作業に戻る部隊長は完全にご機嫌な表情だ。
 普段からこの速度で書類を終わらせてくれると助かるのに、なんでこんなに溜めるんだか。
 先ほど確認した時には四割強だった決裁済が見る見るうちに増えていく、補助を始めて三十分で七割弱に。
 本当にこの人は怠け者だ、家庭的なことはかなり高い技術を持っているのに、なんだって書類に関してはこんなに?

「そのスピードで毎日処理してください、私の仕事が減って多少楽になりますから」

「ややー」

「即否定しない!!」

 どちらかというと私が泣きそうです、即答で否定されるなんて・・・・・いじめですか部隊長。
 そんな中、多少ゆっくりになったとはいえ八割ほど片付けた辺りで緊急通信が入ってくる、ガジェットドローンが出たという。
 海上に二型が出てきたため高町一等空尉、ハラオウン執務官、ヴィータ副隊長の三人で出撃したらしい。
 そして訓練所の流れで一悶着起きたという、またか。

「なのはちゃん、一体何考えとるんやろか?」

「高町一等空尉の行動と考えは私にはわかりません、同じようにランスターの気持ちも」

 話し合いをするといいながら砲撃魔法を放つ高町一等空尉、強さを求めて何かを証明すると言っていたランスター。
 戦う
ことは殺すことに通じ、殺す技術で殺さずに相手を無力化するのは殺す以上に難しい。
 非殺傷設定という便利なプログラムに頼りきり、いざという時に殺す魔法しか使えなくても相手を無力化できることを知らない。
 それが管理局の局員であり、おそらく局員の中で殺す魔法で相手を無力化することができるのは、多くても二十程度だろう。
 そして、非殺傷設定があるからこそ「攻撃魔法」をポンポンと使うのだろうから。
 だからこそ、高町一等空尉も訓練においても絶妙な魔力コントロールをしたとはいえ、攻撃魔法を使ったのだろうから。

「あんな、シャーリーが待機中の新人集めてなのはちゃんのこと話とるんよ」

「は? なんで高町一等空尉の事をいまさら?」

「んー、昔のな、魔法を使い始めた頃のなのはちゃんの話をしとるんよ。たぶんなのはちゃんのフォローのつもりやろなー」

 何だってそんなことをしているんだろうか。

「たぶんなー、新人がなのはちゃんのこと誤解してるんやと思て教えるつもりなんやと思うわ」

「はぁ、つまり『エース オブ エース』の指導の意味を教えると?」

「せやろな。けど、シャーリーは減俸や。なのはちゃんが自分で気づかな、教えなあかんことやのに」

 憤慨している表情と雰囲気を持って、部隊長が通信をばれないように迷彩まで掛けて開いた。
 フィニーノの話を要約すると『高町一等空尉は悪くない、あなたたちが悪い』と、そういっているように聞こえてしまう。
 更に話し自体を考察してみると・・・・・

「部隊長、これって高町一等空尉をヒーローとして見て崇めろ讃えろ賛美しろ、といっているのでしょうか?」

「うわー、うちもシャーリーがそういってるように聞こえてしもた」

 部隊長が隣で頭を抱えてしまった、無理も無いのだがその辺りはどうするべきか。
 溜息をつく回数がここ機動六課に転属させられてからどんどん増えている、特に部隊長たち『三人娘』関係で。
 管理局における『三人娘』は、八神はやて部隊長、高町なのは一等空尉、フェイト・T・ハラオウン執務官の三人のことを言う。
 正直この三人と交流があるだけで周りからの視線が痛いのに、この三人の行動は溜息を誘う事が多い。
 よって結構頭痛の種といえる人たちだった、特に部隊長。
 この人は同姓に対してセクハラとも取れる発言や行動が多い、反面で異性には「笑い」を多く求める。
 私が秘書官の真似事をさせられているのも、唯一この人の行動と言動に対応してきちんと仕事をさせられるからという理由からだ。
 同僚は違う意味もあるといっていたが、その辺りはまったくわかっていないので保留というか、気にしないことにしている。

「ところで部隊長、高町一等空尉の行動について“上”の方から言いたいことがあるから出頭するべしとの連絡が“いま”きました」

「ちょっ、そんな殺生なぁー!!」

「諦めて上からの小言を切々と聞いて、頭下げてきてください。一応スポンサーがいるので、自重してくださいね?」

 いくら伝説とまで言われている三提督がバックとはいえ、あまり無茶をすると資金が消えるし。

「頼むからそないなこと言わんといてやー、“櫃戯”君」

「愚痴る前に頑張って仕事しやがってくれやがりなさい、“はやて”さん」

 自己紹介が遅れた、「架雅烙 櫃戯」と書いて「かがらく ひつぎ」と読む。
 出身は第38管理世界、稀少能力「七姉妹の咎徳」フェーラァ・トゥーゲント・ズィーベナァライ・シュヴェスタァの持ち主でもある。
 リミッターなし、魔力ランクは「C」、総合ランクは「C+」というかなり弱い方に位置する事務局員だ。
 なぜかプライベートでも部隊長に引き摺られ、休日なのに連れ回される事が多くなってきた昨今に涙する二十歳の男でもある。

「うちの代わりに出てきてくれへん?」

「アホ言ってないでさっさといってきやがってくれやがりなさい、仕分けしてサインするだけにしておきますから」

 最近部隊長の将来が微妙に心配になってきたのは確かだ。
 噂では料理が上手いということなので、いざとなったら専業主婦として暮らしていけば大丈夫だろう。相手が想像できないのは痛手か?

「いーやーやー」

「・・・・・・ロウラン、連れて行け」

「わかりました」

「何時からおったんや?!」

「櫃戯三等陸尉に“上”からの言伝を伝えたのは僕ですよ?」

「十分ほど前からいた、気づかなかったんですか・・・・・」

 心配と心労と過労でぶっ倒れるのが先か、血反吐を吐いて入院するのが先か、微妙なところだな。








アトガキもどき・・・・の予感

どうも、題名と微妙に噛みあわない内容ですみません
主人公というか、視点はオリキャラのヒツギ。あまり名前を出さなかったのは漢字が面倒な読み方だからです
カタカナで出してもいいのですが、まぁ、その辺は気にしないでください
今作は「オリキャラ視点の一人称で、視点となる人物の名前を極力出さない形」を目指してみました
というか、ぶっちゃけstsの八か九ぐらいまでしか見たこと無いのでグリフィスが似非っぽいキャラに(汗
キャラがつかめていないので、その辺りはアバウトにお願いします
というわけで、感想、誤字脱字、矛盾、間違いなどがございましたら気軽にどうぞ
根本的に違うなんていわれたら、オリジナルストーリーということで納得してください(是非にでも) そんなことを思いながら、とりあえず純粋ななのは物としてはある意味初めてであり、私の初めての短編でもある今作を削除しましょうww
保存なんてしないでくださいね?



2008.05.26.04:52完成


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